Q : 普段は力が抜けてだらっと座っているが、緊張が入ると頭を後ろに反らせ左を向いて、体も力いっぱい伸びていすから落ちそうになるくらいなんです。そのようなとき、ヘッドレストはどのあたりまで支えたらよいでしょうか?
A : 普段は頭が重力に抗して支持できない状態の子でしたら、頭は首から頭頂部までに至る支持面をもって作成するとよいでしょう。ただし、今回のような、緊張が入ると極端に姿勢が崩れ、特に頭部についてはあごを上げて(首の伸展)時には一側方にねじれてくる場合、ヘッドレストの頭頂付近の支持面を支点としてよりあごが上がる姿勢になる場合があるので、気をつけてください。平常時に頭部を抗重力支持できる子ならば逆にヘッドレストの支持面を後頭部の後ろくらいまでにとどめてあげると緊張が入ったときには頭の伸展の動きをうまく逃がしてあげることができると思います。
今回の子は、普段でもヘッドレストに完全にゆだねているタイプですので、緊張の入ったときのデメリットは上記のようにありますが
あえて頭頂部までしっかり支える形状を選択したほうがメリットは大きいでしょう。
2010年10月08日
2010年07月27日
よくある質問
Q:
座位保持装置に座って作業や食事をしているときに、背もたれと背中に隙間ができて、フィットしてないですが大丈夫ですか?
A:
安静時(静的ポジション)と活動時(機能的ポジション)は姿勢そのものが異なります。よって、どちらを優先した「いす」かによってフィッティングも異なります。
むしろ、一般的に機能的姿勢をとったときは、健常者でもバランスを崩します(正確には静的バランスを崩す→動的バランスに移行する)。なので、食事や活動などにおいて、身体が座位保持装置の支持部(クッション)から離れていることは必ずしも「不適合」とは言えないのです。
アドバイス:
製作時に「どういう目的で使うのか」ということを明確にし、目的がどれだけ達成できたかに評価基準を置くようにしましょう。目的設定のあいまいさゆえの失敗を座位保持装置の不適合と混同してしまう場合が少なくありません。
また、製作してみなければ目標点がわからないというケースもあると思いますが、公費(税金)を使用した補装具製作そのものを「目的の模索」の道具に使ってしまうのはあまりに乱暴かとも思います。
以前、座位保持装置が世の中で未熟だったころはよく「製作」と「可能性の模索」がひとつのプロセスになっていましたが、あれから研究が進み、現在ではある程度そのメカニズムが体系化されているとも言えます。事前に評価や意見交換などできるだけ行い、スムーズに進行できるように心がけたいものです。
座位保持装置に座って作業や食事をしているときに、背もたれと背中に隙間ができて、フィットしてないですが大丈夫ですか?
A:
安静時(静的ポジション)と活動時(機能的ポジション)は姿勢そのものが異なります。よって、どちらを優先した「いす」かによってフィッティングも異なります。
むしろ、一般的に機能的姿勢をとったときは、健常者でもバランスを崩します(正確には静的バランスを崩す→動的バランスに移行する)。なので、食事や活動などにおいて、身体が座位保持装置の支持部(クッション)から離れていることは必ずしも「不適合」とは言えないのです。
アドバイス:
製作時に「どういう目的で使うのか」ということを明確にし、目的がどれだけ達成できたかに評価基準を置くようにしましょう。目的設定のあいまいさゆえの失敗を座位保持装置の不適合と混同してしまう場合が少なくありません。
また、製作してみなければ目標点がわからないというケースもあると思いますが、公費(税金)を使用した補装具製作そのものを「目的の模索」の道具に使ってしまうのはあまりに乱暴かとも思います。
以前、座位保持装置が世の中で未熟だったころはよく「製作」と「可能性の模索」がひとつのプロセスになっていましたが、あれから研究が進み、現在ではある程度そのメカニズムが体系化されているとも言えます。事前に評価や意見交換などできるだけ行い、スムーズに進行できるように心がけたいものです。
2010年07月24日
よくある質問
Q:
座位保持装置で側彎を予防したいのですが・・・・
A:
A(アンサー)としましたが、いろいろな考えがあるとおもいますので、臨床のなかのいち見解として申し上げます。
側彎自体の病理的メカニズムは置いておいて、座位保持装置が人間の身体に働きかける「可能性」として考えてみますと、二つの方向があると思います。
ひとつは、人間の身体が重力に負けて倒れようとする力(重み)と同じ力を身体に与えるということ、これが「支える」という働きかけです。
具体的には、背もたれにもたれると「背もたれ」そのものが人間の背中に同じだけの「力」を返してつりあい、安定するということです。このような場合、同じだけの「力」を返せるかぎり、どんな倒れ方であっても「支える」ことは可能と言えます。
もうひとつは、複数の「力」の総合作用によって関節に姿勢変化をもたらすことで、これが「矯正」という働きかけです。
具体的には、下肢装具で内反尖足の状態にある足関節にベルトや靴・プラスチックの支持面で機能的な肢位になるようにすることです。この場合先ほどの場合とは異なり、同じだけの「力」を返すだけではなくそれ以上の「力」を返す必要があります。しかも、複数の「力(の方向)」の作用ですので、「力」の「力点」は三次元的な位置になる場合がほとんどです。
座位保持装置でのわかりやすい例は、ショルダーベルトなどがそうです。
このように考えると、こと「側彎」の矯正と考えると明らかに後者の場合に相当すると考えられます。
そこで、座位保持装置を考えると、基本的に「いす」の形態をとっていることから、「力」を返す支持面は、「後ろ」と「下」しかありません。つまり、背シート(背クッション)と座面です。そう考えると、三次元的な「力」の作用を期待することが基本的に安易ではないと考えられます、が、方法はないわけではありません。
背シート(背クッション)や座面などと、「ベルト」をうまく配置すれば理論的には可能ですし、実際臨床での成功例もあります。
そして、論点の極まりで言うと、「側彎」は「脊柱(背骨)」の変形で、そこには「関節」がたくさん連続しているということで、これが一般的によく言う、「座位保持での側彎の矯正は難しいなぁ」ということだと思うのです。
できれば「体幹装具」との併用がもっとも合理的ですが、なかなか「体幹装具」は窮屈で常時着用はご遠慮・・・という方が多いので難しいところです。「体幹装具」でも「矯正」のためにはそれほど「窮屈」なので、同じものを座位保持に求めたら同じくらい「窮屈」なのかなぁとは普通に想像してみて下さい。
アドバイス:
現状からどれだけ改善に向かえたか、をひとつの評価基準にしてみてはと思います。
座位保持装置で側彎を予防したいのですが・・・・
A:
A(アンサー)としましたが、いろいろな考えがあるとおもいますので、臨床のなかのいち見解として申し上げます。
側彎自体の病理的メカニズムは置いておいて、座位保持装置が人間の身体に働きかける「可能性」として考えてみますと、二つの方向があると思います。
ひとつは、人間の身体が重力に負けて倒れようとする力(重み)と同じ力を身体に与えるということ、これが「支える」という働きかけです。
具体的には、背もたれにもたれると「背もたれ」そのものが人間の背中に同じだけの「力」を返してつりあい、安定するということです。このような場合、同じだけの「力」を返せるかぎり、どんな倒れ方であっても「支える」ことは可能と言えます。
もうひとつは、複数の「力」の総合作用によって関節に姿勢変化をもたらすことで、これが「矯正」という働きかけです。
具体的には、下肢装具で内反尖足の状態にある足関節にベルトや靴・プラスチックの支持面で機能的な肢位になるようにすることです。この場合先ほどの場合とは異なり、同じだけの「力」を返すだけではなくそれ以上の「力」を返す必要があります。しかも、複数の「力(の方向)」の作用ですので、「力」の「力点」は三次元的な位置になる場合がほとんどです。
座位保持装置でのわかりやすい例は、ショルダーベルトなどがそうです。
このように考えると、こと「側彎」の矯正と考えると明らかに後者の場合に相当すると考えられます。
そこで、座位保持装置を考えると、基本的に「いす」の形態をとっていることから、「力」を返す支持面は、「後ろ」と「下」しかありません。つまり、背シート(背クッション)と座面です。そう考えると、三次元的な「力」の作用を期待することが基本的に安易ではないと考えられます、が、方法はないわけではありません。
背シート(背クッション)や座面などと、「ベルト」をうまく配置すれば理論的には可能ですし、実際臨床での成功例もあります。
そして、論点の極まりで言うと、「側彎」は「脊柱(背骨)」の変形で、そこには「関節」がたくさん連続しているということで、これが一般的によく言う、「座位保持での側彎の矯正は難しいなぁ」ということだと思うのです。
できれば「体幹装具」との併用がもっとも合理的ですが、なかなか「体幹装具」は窮屈で常時着用はご遠慮・・・という方が多いので難しいところです。「体幹装具」でも「矯正」のためにはそれほど「窮屈」なので、同じものを座位保持に求めたら同じくらい「窮屈」なのかなぁとは普通に想像してみて下さい。
アドバイス:
現状からどれだけ改善に向かえたか、をひとつの評価基準にしてみてはと思います。
2010年07月23日
座位保持装置・車いすに関する学術書について
こんばんは。水野です。
さきほど、ありがたい書き込みでご質問がありました、「書物・文献」についてです。
私の知るところで、この手の「概論」的な内容を含むものはいくつかありますが、ほとんど「はじめに」を読んですぐ寝てしまいます。(怒られそう)
ひとことで言うと、シーティングの概念は、現時点では完全には確立されていないということです。
なぜなら、「正解」が病理学てきなところに帰結するものではなく、そのひとその人の「生活条件」に正解があるからです。
個々人の「生活」というと、人数分のバリエーションが存在するわけで、それだけ「正解」のパターンもまちまちなわけです。
大事なのはそのことを理解して、個々人のニーズ(正解)にあった「生活用具」を作っているのだという認識です。
なので、「これはこう」といって画一的にとらえてしまってはまずいです。
ただ、あえて入り口として文字で書かれた情報を一読されるのなら、
「日本リハビリテーション工学会」の分会である「SIG姿勢保持協会」の発行している学術大会冊子をご覧になられることをお勧めします。
SIG姿勢保持はこちらから
そこは、毎年この手の内容で学会が開かれていますが、総論・概論もありますが、特に注目すべきは「個々のケース」に「ああしてみた、こうしてみた」といった「症例報告」が盛りだくさんなのです。
「個々のケース」の集合体が「座位保持概論」だと思ってください。
いわゆる 「症候群」 みたいな感じです。
そうやって思うと結構気楽にもなります。(・・か?)
つけたしで、基礎的な医学的知識(解剖・基礎運動・リハビリ)はそれなりに必要かとおもわれ、それについては星の数ほどの書物がありますよね。
さきほど、ありがたい書き込みでご質問がありました、「書物・文献」についてです。
私の知るところで、この手の「概論」的な内容を含むものはいくつかありますが、ほとんど「はじめに」を読んですぐ寝てしまいます。(怒られそう)
ひとことで言うと、シーティングの概念は、現時点では完全には確立されていないということです。
なぜなら、「正解」が病理学てきなところに帰結するものではなく、そのひとその人の「生活条件」に正解があるからです。
個々人の「生活」というと、人数分のバリエーションが存在するわけで、それだけ「正解」のパターンもまちまちなわけです。
大事なのはそのことを理解して、個々人のニーズ(正解)にあった「生活用具」を作っているのだという認識です。
なので、「これはこう」といって画一的にとらえてしまってはまずいです。
ただ、あえて入り口として文字で書かれた情報を一読されるのなら、
「日本リハビリテーション工学会」の分会である「SIG姿勢保持協会」の発行している学術大会冊子をご覧になられることをお勧めします。
SIG姿勢保持はこちらから
そこは、毎年この手の内容で学会が開かれていますが、総論・概論もありますが、特に注目すべきは「個々のケース」に「ああしてみた、こうしてみた」といった「症例報告」が盛りだくさんなのです。
「個々のケース」の集合体が「座位保持概論」だと思ってください。
いわゆる 「症候群」 みたいな感じです。
そうやって思うと結構気楽にもなります。(・・か?)
つけたしで、基礎的な医学的知識(解剖・基礎運動・リハビリ)はそれなりに必要かとおもわれ、それについては星の数ほどの書物がありますよね。
2010年07月22日
よくある質問
Q:
足(足底)が足台にのってない(浮いている)ですけど、大丈夫ですか?
A:
基本的には良くないです。
足がしっかりフットプレートの上にのっているということは、脚の体重をそこでしっかり受けているということで、骨盤・大腿部の滑り落ちを予防するひとつの方法です。また、滑り落ちていないということはしっかり股関節が屈曲(おなかの方へ曲がっている)できているということで、緊張そのものを出にくくすることが期待できます。
そして、物理的ではなく、感覚入力的に必要なのは、足の裏に重力の刺激が感じられると、正常に運動発達をしてゆくときに感じる刺激を仮想体験(つかまり立ちや歩行)できるということです。すなわち、脳の感覚受容のシステムの正常発達への促しが出来るということです。(効果はひとそれぞれ違いますが・・・)
アドバイス:
ただ、上記のことよりも、筋緊張の亢進が極めて強く、時に「フットレストを蹴り台にしてまっすぐ棒のように反り返ってしまう」という子は、一時的な経過措置としてあえて「足台から足(足底)が浮いた状態にすることがあります。
重力不安に対する感覚入力の場面を、車いす・座位保持以外の場所で探し、実践してゆくと良いと思います。
足(足底)が足台にのってない(浮いている)ですけど、大丈夫ですか?
A:
基本的には良くないです。
足がしっかりフットプレートの上にのっているということは、脚の体重をそこでしっかり受けているということで、骨盤・大腿部の滑り落ちを予防するひとつの方法です。また、滑り落ちていないということはしっかり股関節が屈曲(おなかの方へ曲がっている)できているということで、緊張そのものを出にくくすることが期待できます。
そして、物理的ではなく、感覚入力的に必要なのは、足の裏に重力の刺激が感じられると、正常に運動発達をしてゆくときに感じる刺激を仮想体験(つかまり立ちや歩行)できるということです。すなわち、脳の感覚受容のシステムの正常発達への促しが出来るということです。(効果はひとそれぞれ違いますが・・・)
アドバイス:
ただ、上記のことよりも、筋緊張の亢進が極めて強く、時に「フットレストを蹴り台にしてまっすぐ棒のように反り返ってしまう」という子は、一時的な経過措置としてあえて「足台から足(足底)が浮いた状態にすることがあります。
重力不安に対する感覚入力の場面を、車いす・座位保持以外の場所で探し、実践してゆくと良いと思います。